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なぜ今、海外から抹茶の問い合わせが殺到しているのか〜山奥の宿屋が見た抹茶市場の異常な現状〜

更新日:5 日前


こんにちは。福岡県八女市の山奥で、小さなゲストハウス「天空の茶屋敷」を営んでおります坂本治郎です。(山奥の大きな家ではありますが、事業規模としては小さな宿です)


僕は本業がお茶屋さんでもなく、山間の古民家を最低限のリノベーションした宿泊施設を運営している者(今は市議会議員が本職であり宿業は副業です)ですが、近年なぜか抹茶に関する海外からの問い合わせが急増しています。


今年に限って言えば、うちのような宿泊施設でさえ、30件以上の問い合わせをいただいています。はっきり言って異常事態です。うちぐらいでこんな状況という事は日本中のお茶屋さんは大変なことになってるでしょう。


これまでの抹茶の問い合わせはアメリカや西ヨーロッパが中心だったけれど、今年は新規で聞いた国ではタイ、インドネシア、ウクライナなど

(ちなみに、うちの英語名がSky Tea Houseなのでお茶屋さんと勘違いされて、たいして調べずに「Yame Tea」などのグーグルなどで出てきたリストに片っ端からメールを送ってるのでしょう、僕が海外で仕事を探していた時などもそんな感じで雑にメール送りまくってたのでお気持ちすごく分かります)


しかもその問い合わせの内容が、一様に「High grade matcha(高級抹茶)を買いたい」というものばかり。実際にうちに宿泊してくれる彼らと会話していくと、彼らがイメージしている"高級抹茶"と、我々日本人が伝統的に理解している“高級抹茶”との間には、かなりのズレがあることが分かってきました。


そもそもなぜ、いつごろから、どうやって抹茶ブームが起こったのか

だいたい2010年前半ごろと言われてます、抹茶が世界的にブームとなった背景には、いくつかの要因があると考えられます。まず、抹茶はビタミンや抗酸化成分(特にカテキン)を多く含んでおり、健康志向の高まりとともに注目されるようになりました。次に、SNSを通じて、鮮やかな緑色の抹茶スイーツやラテがインスタ映えすることにより拡散されたことも大きな要因と言われてます。


インスタグラムのブームと抹茶ブームは時代的にも密接な関係があるということです


その背景をもって、アメリカ西海岸を中心に、ビーガン・グルテンフリー・カフェインレスといった選択肢を求める層の中で、「コーヒーの代わりに抹茶を」というライフスタイルが広がりました。この流れが欧米やアジア各国にも波及し、カフェ文化やスイーツ文化と結びつく形で抹茶人気が加速していったのです。

日本の茶道文化を深く理解しているわけではないが、“なんとなく体に良くてオシャレ”というイメージが先行し、それが今の高級抹茶ブームにつながっていると感じています。



そもそも本来の「高級抹茶」とは

日本で言う高級抹茶とは、主に茶道用に用いられる「英語ではセレモニアルグレードと言われるもの」のことを指します。

このクラスの抹茶は、

  • 玉露のように丁寧に覆い(被覆)をして育てた茶葉(碾茶)

  • それを石臼で丁寧に挽いたもの

  • 色が鮮やかで、苦味が少なく、香りと旨味が際立つ

という非常に繊細さが求められます。そのため、生産にも手間がかかり、保存も極めて難しく、通常は小さな缶に詰めて冷凍保存されるようなものです。

さらに、抹茶は日本全体の茶の生産量のうち、わずか5%前後しか存在しない希少品です(数字はちょっと古いかも)。


外国人の言う「高級抹茶」とは

ところが、海外の方が求める"High grade matcha"の多くは、必ずしも茶道で点てて飲むための抹茶ではありません。

(茶筅を使って点てる文化は少数派、ごく一部の抹茶愛好家だけです、確かにそういう人はうちにはたくさん来ますが)


僕が受け取っている問い合わせでは、

  • 抹茶ラテを作りたい

  • 抹茶クッキー、抹茶ケーキを作りたい

  • ドリンクに混ぜたい

という用途がほとんどです。


そんなものに希少である高級抹茶を使うなよ!!

とツッコミたくもなりますが


つまり、「セレモニアルグレードを探している」と言いながらも、その用途に適した飲み方をしているのは一部だけで、実際にはラテやスイーツなどへの使用が目的であるケースが多いのです。茶筅で泡を立てて飲む文化を持たない彼らにとっては、「品質の良い抹茶=日本製で綺麗な緑色をしているもの」というざっくりとした印象が先行しているように見受けられます。

とはいえ、高級抹茶を使った抹茶ラテの方が風味も色合いもよくおいしいのは事実なのですが、まあ勿体ないというかなんというか、、、、


中国、インド、スリランカの“抹茶”との違い

その昔、僕は実際にそれらのアジアのお茶所を旅した事があるのですが、特に中国・インド・スリランカなどでも“matcha powder”とか”Japanese style tea”と称して抹茶に似た製品が大量に生産されていました。これらの製品は、実際には煎茶や緑茶をそのまま粉砕したものであり、

  • 被覆栽培ではない

  • 石臼挽きではない(多くはボールミルなど)

  • 品種や製法がちがう


という点で、日本の伝統的な抹茶とはまったくの別物だったりします

それでも“matcha”と表記され、市場に流通しており、価格も安いため、多くのスイーツ業者や飲料メーカーがそちらに流れています。

一方、こうした海外産の粉末に不信感を持つ層も存在し、「やはり本物の日本製を」と考える人たちが、日本のお茶屋さんに問い合わせる、、しかも何故かうちのような宿屋にまで問い合わせをしてきているのではないかと考えています。


天空の茶屋敷としての立ち位置と対応について

僕は副業寄りのお茶農家です。

(一応、耕作放棄地を有効活用し、生産量は生葉で500㎏、乾燥した荒茶換算で100㎏程度です)

ちなみに僕の周りの笠原移住者には農的暮らしがしたくて移住をした上で、お茶も無農薬などにこだわってやってるケースが散見されます。

僕もそのうちの一人といってよいです。JAS認定を受けてるわけではないので、有機とか無農薬だという言葉はつかえないですがそれに相当します。しかも山奥の茶畑です。


しかしながら、茶道用のセレモニアルグレード抹茶を作っているわけではありません。

しかし、「農薬や化学肥料を使わず、八女の山奥で自然栽培した煎茶の端数」があります。

その端数や選別から外れた葉を使って、抹茶風に粉砕したもの(工場で細かくすり潰したもの)を、デザートや抹茶ラテ用にご提供することは可能です。

これは厳密には抹茶ではなく、粉末緑茶と呼ぶべきかもしれません。 しかしながら、

  • 深緑のような落ち着いた色味

  • 農薬不使用の安心感

  • 手作りの素朴な風味

といった要素は、ラテやスイーツとの相性も良く、特にナチュラル志向・ビーガン志向の海外の方々には喜ばれています。

前のブログにもあります通り去年のは50g300円、今年のものは50g800円となります。

また、つながりのあるお茶屋さんを紹介することも可能です。(これは日本人限定ですね)



議員目線として見た抹茶市場の構造

当然この抹茶市場の過熱ぶりについては、僕のような個人事業主だけでなく、地方自治体や八女の議会の間でも話題になっています。

たとえば愛知県の西尾市などは、地域を挙げて抹茶を戦略的にブランド化し、外国人の商人の受け入れ態勢、そして輸出にも積極的に取り組んでいます。業務用グレードとして規模の拡張も図っていると聞いています。

ネットニュースでも日本全国各地のお茶所がそれに追従している印象です。

実際に今年は僕の地域の笠原でも、使われなくなっていた製茶工場をとあるお茶屋さんが買い取り、今後は甜茶工場(てんちゃ工場、石臼でひく前の茶っぱの状態ですね)として稼働するという動きもあります。こうしたローカルな動きが広がってきていることも、抹茶を取り巻く現状を象徴しているように思います。


一方で、八女市にはお茶を専門とする先輩議員もいます。そのベテランとしてのご意見を聞いてみたのですが「一時的なブームに踊らされてはいけない。こんなものが10年続くわけがない」と語っておられました。


確かに、タピオカブームを連想したらそうかもしれないですね。

実際には少し違うかもしれないけれどいつかは海外の人々も、抹茶の希少性や保存の難しさに気づき、「別にセレモニアルである必要はないのでは」と理解する日が来るだろうと僕も予想しています。

業務用やクッキンググレードの抹茶で十分だと分かったときには、需要と供給が落ち着いて今のような過熱は収まっているかもしれません。


しかし、だからといって今のチャンスをスルーするべきかどうか。目の前にある需要に目を向けて対応していくこともまた、地方の小規模事業者にとって重要な判断なのではないかと感じています。最低限その取り組みのための支援くらいは議論されるべきだと思ってます。



最後に:求めるグレードと目的の一致を

最近、国内のお茶屋さんでも「抹茶はもう売り切れている」「在庫がない」というネットニュースの記事をよく目にします。実際に僕が八女のお茶屋さんを訪れるときは抹茶コーナーでは在庫を隠していたりもするし、一人一種類ずつなどの制限をかけていたりなどの工夫をされています


それもそうなってしまうはずです、多くの外国人が“セレモニアルグレード”を求めて一気に買い占めているのです。本当にインバウンドの金持ちたちの買い方がえげつない、、、

しかし、彼らの目的は茶道ではなく、あくまで料理や飲料への使用だったりする。


であれば、本来ならクッキンググレードや粉末緑茶で十分なはずです。

このギャップに気づかず、今では安くなってしまった日本に目を付けられ「一番いいものを」とだけ言ってしまうのは、日本のお茶文化や供給体制にとっても困った状況を生んでいます。


僕ような立場の者でも、そういった需要に応える選択肢を提案できればと思ってるのですが


セレモニアルグレードではないけれど

  • 山奥の空気

  • 小規模生産

  • 農薬不使用 という背景のある「抹茶風粉末緑茶」を、必要な方にはご紹介可能です。

ご興味ある方は、ぜひお尋ねください。


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