地域おこし協力隊制度について僕が思うこと
- Jiro Sakamoto
- 9月16日
- 読了時間: 6分
こんにちは、八女市議会議員の坂本治郎です。

今回は「地域おこし協力隊」という制度について、僕自身が移住者として感じてきたこと、議員として見えてきたことを少し整理してみたいと思います。
ちなみにこれは、前三田村市長時代の一般質問で僕がテーマとして上げた内容でもあります。
この制度には賛否両論あると思いますし、実際に僕の周りには地域おこし協力隊の方々が多いので普通の議員よりも地域おこし協力隊の実態に関しては詳しいと思いますし、もちろんその方々に失礼のないような発言をしたいと考えてます。
協力隊に知り合いがいる場合ってその方々の存在意義に対して口出ししているようにも取られかねないので普通はこういうことは書かないと思います、だからこそ僕のような人が議場だったりこういう場で公言することは意味があると思ってます。
つまり、ここではあくまで、実績としての協力隊という制度そのものについての提言であり、一人一人の活動に対して突っ込むようなことはしません。
八女の地域おこし協力隊に対しての発言ではなく日本にある地域おこし協力隊制度に対する発言です。
移住ブームの“起爆剤”だった制度
まず、地域おこし協力隊制度はあってよかった制度だと思ってます。
この制度があったからこそ「地方に移住する」という選択肢が社会的に認知されるようになったと僕は思っています。
10年前、僕が八女に移住してきた当時、正直いって「なぜこんなところに来たの?」と、かなり変わり者扱いされました。「変わり者と」というレッテルを張られる世論の中で戦う、そんな空気の中で生活を始めたのをよく覚えています。今では笑い話ですが、当時は結構しんどかった、、、というよりいわゆる社会の中でマトモに生きるという事を諦めていたものです。
そんな中いた同世代の移住者は地域おこし協力隊でした、この方々がいなかったら確実に僕は孤立していただろうし、そういう人たちによって僕はゲストハウス開業まで持ち上げられた、そして今は議場にいるわけです。
八女だけではなく日本全国で一気に制度が始まったことで、定期的に市役所側に移住者人材が供給され、「若者が田舎移住して自分らしい生き方を」が田舎社会でも認知されて行きました。地方に移住することが“変なことではない”と世間に広まっていった。つまり、この制度は「移住ブームの起爆剤」として確かに役割を果たしたと思うのです。
「動き回る人」が制度として優遇される世の中
ただ、その一方で僕はこうも感じています。いまの世の中は「制度の中で動き回る人」が優遇されすぎているのではないか、と。
外国人へのビザ優遇(会社へ)、留学生への奨学金(優秀な人限定ですが)、そして地域おこし協力隊のような移住支援。これらはどれも「外から来る人」に対して手厚い制度です。
倍率と実情としては地域おこし協力隊はスキルや学歴もあまり求められるわけではないのに、今は売り手市場にありながらも給料はどんどん上がっていき、今では最大月30万、家賃も保障され活動費、自由度で言えば他の若手市職員と比べても圧倒的に優遇された仕事になっています。
しかし逆に言えば、「地元で根を張って暮らし続けてきた人」や「制度の外で自力で移住した人」には何の補助もないのです。
僕自身、海外放浪から帰ってきて八女に移住したときは制度を知らなかったので、そういうものに頼れずにやってきました。生活基盤も、仕事も、自分で整えるしかなかった。その経験からすると、制度にうまく乗れた人だけが支援を受けられるのはやっぱり不公平感があります。
成果と費用対効果
さらに現実的な数字を見てみると、違和感は強まります。
年間500万くらいの予算は捻出されてるので3年間で一人当たり約1500万円
(勿論全額が給料ではないだろうから、どこかで余計に無駄なコストがかかってるはず)
それでいて総務省の発表(2025年4月)によれば、
直近5年間に任期を終えた地域おこし協力隊員8034人のうち、5539人=68.9%が「活動地や近隣市町村に定住」しているという状況。
つまり1億5000万円の予算を投じて実際に移住したのは7人程度。
計算すると、移住定住に結び付ける一人あたり2,000万円以上のコストがかかっている計算です。
もちろん国の予算だから「使わないと損」という論理は働きます。自治体も「国がくれるなら申請しないと」と考えるのは自然なことです。けれど、市民の目線からすれば、国の予算も結局は自分たちの税金です。成果を問わず“使うこと”が目的化してしまうのは本末転倒ではないでしょうか。
制度の限界 ― 任期と定着率
この制度の最大の弱点は、地元の人にはない外からのフレッシュな目線で3年後の開業に期待されているという点です。はっきり言ってそれはかなりハードルが高いしプレッシャーです。
メディアにはそういう成功例が取り上げられて目立ちますが
では実際に田舎移住して事業を起こした僕のことを言いますが『天空の茶屋敷』は田舎移住の成功例としてたびたびメディアなどに紹介されたことも多々ありますが、ここから発生する報酬という意味では天空の茶屋敷の主ですら地域おこし協力隊の待遇には及びません。
そしてもう一つは「任期がある」という点です。最長3年で終わりが来る以上、制度が終わればそのまま去ってしまう人もいます。
任期があっていなくなってしまうかもしれないのであれば行政側としても責任のある仕事を任せにくい側面もあると思いますし、そもそもそのまま市職員の椅子をとってしまう事って本旨から考えたらどうなんだろうとも思います。もちろんそこで必要とされてたスキルや人材が不足して他にいなかったのであれば、というケースに見事にフィットしてたケースは歓迎されるべきですが
生活基盤を制度と報酬に依存している人ほど、終了後にゼロから仕事や住居を整え直す必要があり、結局は定住に結びつかないケースもあるのです。
(僕がもし協力隊だったら事業のめどが立ってなかったら出ていくかもしれないと思うから、その観点から考えたら出ていく人も責めることはできない)
一方で、制度外で自力で移住してきた人たちは、仕事も住居も自分で整えているので覚悟が違います。期限がないからこそ長く残りやすい。結果的に、制度外の人のほうが定着率は高いのではないか、と僕は実感しています。
必要なのは「呼ぶ政策」から「残る政策」へ
ここまで書いてきたように、地域おこし協力隊は「移住が珍しかった時代」に必要な制度でした。しかし今では移住はごく普通の選択肢になっています。もう「田舎に人を呼ぶための起爆剤」としての役割は終わったのではないでしょうか。
これから本当に必要なのは、「呼ぶ政策」ではなく「残る人への政策」だったり「田舎での事業開業の数年(できれば長く)の下り階段的な免税」などではないかと思います。
一人当たりの移住に2000万円もの税金を投じる制度であれば、その資金をもっと多くの人が恩恵を受けられる政策に国としても転換すべきではないでしょうか??
僕自身の立場から
僕も「動き回る人」として海外放浪を経て八女にたどり着きました。ただ、制度の外で挑戦したからこそ、覚悟をもってこの地に根を張ることができたと思っています。
だからこそ、制度自体を否定するつもりはありませんが、「制度があるから移住する人」と「制度がなくても移住する人」との間に差がつきすぎる現状には疑問を感じます。
地域おこし協力隊は、確かに一時代を作った素晴らしい制度です。しかし、今後も同じ枠組みを延命するのではなく、時代に合った「残るための仕組み」に転換していくことが必要だと思います。
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